3,000人の乳がん手術から見えてきた、より良いケアを細やかに実施します。

より良い乳がん治療を実現するために

ひがき先生

私は、今までに約3,000人の乳がん手術に携わってきました。手術は乳がんの診療の中の一つの過程にすぎませんが、医師にとっては、もっとも知識と経験、そして技術と判断力を必要とする行為です。手術をするにあたってはまず適応があるかどうかを判定します。なぜならば、手術は大きな犠牲を伴うのでそれに見合った価値がないとしてはいけないからです。代表的な例としては、全身にがんが転移していて手術をしてもその寿命を延ばすことができないケースには、手術はしないほうが良いこともあります。また、手術をするにしても、手術の前に薬を使う(術前ホルモン療法や術前化学療法)ほうが良いのかを検討する必要があります。

手術にはいろいろな方法があります。まず、がんを切って取るのか、ラジオ波などで焼くのかどうかを決めます。手術は場所によりいろいろな選択ができます。まず乳房を温存するのか、全摘するのかの選択があります。どちらかに選択したのちにも、温存の場合は、切除量を最小限にとどめるのか、乳房の1/4まで切除するのかの選択があり、全摘の場合は、乳輪・乳頭を温存した皮下乳腺全摘をするのか、完全に取りきるのか、乳房を再建(作る)するかどうかなどの選択があります。また、リンパ節では何もしないのか、センチネルリンパ節生検をするのか、リンパ節郭清をする(リンパ節をきちんと掃除するように切除する)のかが選べます。

このように手術をするには、方法を選択させるだけの知識、そして診断能力、手術をする技術と体制が必要です。そして術中に組織検査ができる体制、それから予想外の展開となったときに慌てずに最良の方法で最後までやり遂げるチームが必要です。ですから、手術を第一線の乳がん治療と呼ぶこともできます。最近では、乳がん治療の主役は薬物療法と言われることもありますが、手術が可能な乳がんを対象とした場合、手術を省略して良いという報告はほとんどありません。もちろん手術だけでも不完全です。乳がん治療をより完璧なものにするためには、良い手術良い薬物療法が必要となります。

限られた条件の中でのさまざまな取組みから見えてきたこと

ひがき先生

このように、私は今まで乳がん治療の中でも、もっとも実力と実績が必要な表舞台で仕事をしてきました。それができたのも、乳がんを正確に診断して紹介していただいた先生方の存在が大きかったことは言うまでもありませんが、術後のfollow upをお願いした先生や施設の存在も忘れることはできません。広島市民病院でしかできないことに最大の力を注ぐこと、それは手術でした。その結果として、どうしても手術後のafter careに使うことのできる時間は制限を受けました。

そのジレンマを解決する一つの方法として広島乳がんネットワークがあります。これは私が委員長をさせていただき数年かけてできあがった制度です。その詳細は広島県のHPを参照していただくものとして、簡単にその内容を紹介すると以下のようになります。乳がん診療の過程を「検診」、「精密検査」、「手術」、「術後follow up」に分けたうえでそれぞれの施設が得意な分野を選択するというものです。広島市民病院はその中で「精密検査」、「手術」、「術後follow up」を受け持たせていただいています。

しかし広島市民病院にいて感じたことは、スタッフと時間の大半は「手術」と、再発治療の患者さんのために使われ、「精密検査」と「術後follow up」に回す余力はほとんどありませんでした。こういった広島市民病院の実情を知り、手術を通じて乳がんを知り尽くした私としては、今後何をすべきかが自ずと見えてきたのです。

患者さんのニーズに特化した医療はどうあるべきか

ひがき先生

たとえば、手術に時間を回さないのであれば、「精密検査」と「術後follow up」をより丁寧にできるはずです。特に後者は患者さんのニーズにできるだけ応じること、いつごろ、どこに再発しやすいか、薬の副作用はどうか、何に悩まれているか・・・等々、広島市民病院ではなかなか行うことができなかったことが提供できる。たとえば、術後の患者さんはガイドライン上では1年に1度のマンモグラフィで良いとされていますが、3か月ごとにエコー検査をしたほうが、反対側の乳がんや手術をしたあとの温存乳房再発は見つけやすいに決まっています。そうです、エコー検査は乳がん領域では聴診器代わりのツールなのです。残念ながら広島市民病院ではそれを実施するだけの時間を確保できませんでした。

機は熟したようです。患者さんの細やかなニーズにフォーカスしたケアをして差し上げる場をつくるべく、私は行動を開始しました。

その先にある理想的なトータルケアを実践する場「ひがき乳腺クリニック」

ひがき先生

私は約3年間、広島市民病院で副院長ををさせていただきました。私にとってこの上ない名誉ではありましたが、管理職の仕事は多くの時間と体力を必要とします。限られた時間を効率よく使うことを考えながらこなしてきた外来や手術も限界に達しました。

そこで、管理職を辞し、その代償として手術もやめることにしました。私はまだ老眼でもなく体力もそれなりにありますので、手術に関して言えば、今、私は人生の中でピークにいるかもしれません。なぜならば、経験と技術と気力と体力のバランスが取れているからです。その時にメスを置くことは、山口百恵がマイクを置いた時と(表現はややオーバーかもしれませんが)共通したものです。

これからの私は「手術」以外のすべてである「検診」、「精密検査」、「術後follow up」を、「手術」ができる医師として、そして広島市民病院という大病院の得意と不得意を知り尽くしている医師として、広島市民病院のような大病院とスクラムを組んだ上で、今までしたくてもできなかった診療を提供できると考えています。

その先にある理想的なトータルケアを実践し、患者さんに大きな安心をお届けする。それが「ひがき乳腺クリニック」の最大の利点であり私の使命なのです。

ひがき乳腺クリニック

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